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2008年09月01日

ジェラール・グリゼイの残したもの…

SuntorySummer08 サマーフェスティバル2008

サントリー音楽財団が毎年開催する「サマーフェスティバル2008」が8月24日に幕を開け、昨日の芥川賞作曲賞選考演奏会を経てスケジュールを終えた。

今年の注目プログラムはなんといっても没後10年のフランスの作曲家、ジェラール・グリゼイの作品だったであろう。
フランスの作曲家、古くはラモー、クープラン辺りから時代を降りてきてフォーレ、ショパン、リスト、ドビュッシー、ラヴェル、そして現代になってメシアンの後を次ぐ大作曲家はやはりジェラール・グリゼイではないかな。

グリゼイの残した功績は現代における新しい作曲の技法を作り出したこと…となるけどそれは発明に近い偉大な功績だと思っている。

昔中学で習った音楽の三要素「リズム・メロディ・ハーモニー」という基本。現代音楽界ではまず、この三つをぶち壊すことから始まる、と言っても過言ではない。それほど音楽を作る作業は人のしないこと、普通じゃないこと…という隙間を求めて新しさの追求を続けてきていて、ここにきてやや飽和状態なのではないか、と感じたりもする。

そんな中、グリゼイの作り出した作曲法は音楽を音響的に捉えて作り出す技法で、音符で構築するのではなく音で構築する、と言われたりする今までとは全く違う新しい視点の作曲法。音を科学的分析によって組み立てていく方法。とは言っても楽譜は音符が書かれてはいるのだけれど。
ggrisey Gerard Grisey (1946-98)

スペクトル主義の音楽は縦に組み立てられた和音が非常に美しく、ある周期を伴ってそれが演奏される。それはパルス感にもなったりする。今まで音楽を横の流れとして捉え続けてきた世界にいきなり何十層ものカステラを縦に切って並べていくようなそういう斬新さに作曲界はどよめいた。

グリゼイの作品は日本では本当に演奏される機会がない。一つには編成上、費用がかかることが大きいかもしれない。それが今回はグリゼイの「音響空間」という全部で1時間半以上もかかる大作が生演奏で聞けた。その他のアンサンブル作品も目の前で聞くことが、見ることができて幸せな時間を味わった。

こんなに科学的に音楽を分析して構築して作り出しているはずなのに、グリゼイの作品は、どこか原始的な、人間の起源を感じさせるところがあり暖かみを感じたりする。究極のインテリジェンスとそれを包んで余りあるさらなるヒューマニティ。

これがグリゼイのグリゼイたるゆえんと思う。天才的大作曲家の書いた作品はそれが技術の卓越性のみに終わることなく、必ずそこにヒューマニティが存在している。そしてさらにそこには音楽界の一部の学者達が否定軽蔑し、忌み嫌うエンターテイメントが否応なしに存在してしまう。

そして彼の後に続く作曲家はその技術のスキルは完全に学ぶことができたとて、その個々のヒューマニティを織り込む、あるいはそのヒューマニティが立ち上るまでは行かないままにそのジレンマと永遠に闘う宿命を背負う。

そんな事をつらつらと感じながら、幸せなサントリーサマーの一週間を過ごせた。52歳で亡くなったグリゼイを本当に残念に感じてしまったりもした。あと20年生きて書き続けたなら、もっともっとたくさんの人が彼の作品を聞けて、スペクトル主義のスタンダードを、極東の日本でも広められたのに…

聞いたことのない方、是非グリゼイの曲、お聴きになってみて下さい。美しいです。現代音楽って退屈!というイメージを払拭してくれるはず。

♪CD情報♪
 ジェラール・グリゼイ「音響空間」
 ジェラール・グリゼイ「ヴォルテクス・テンポルム」ピアノと五つの楽器のための
タグ:Gerard Grisey
posted by カオリン at 11:10| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | コンサートレビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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