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2010年06月19日

芳醇な人間性を歌に込めてースウェーデン放送合唱団来日公演

swidishchorus.jpg スウェーデン放送合唱団

2006年12月の来日からはや3年過ぎて6度目の来日となったスウェーデン放送合唱団。「ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団に匹敵する世界一の合唱団」といわれるスウェーデン放送合唱団の演奏はそれは素晴らしかった。

生憎の雨にもかかわらず、会場オペラシティタケミツメモリアルホールは超満員。この日の演奏に期待する熱気であふれかえっていた。

オランダ人指揮者ペーター・ダイクストラによる今回のプログラムは下記の通り:

・バーバー:アニュス・デイ(神の子羊)
・マルタン:二重合唱のためのミサ曲
 I.  キリエ
 II. グロリア
 III. クレド
 IV. サンクトゥス
 V.  アニュス・デイ
・スヴェン=ダヴィッド・サンドストレーム:主を讃えよ(2003)
・プーランク:二重合唱のためのカンタータ(人間の顔)

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バーバーのアニュス・デイはもちろん今日の20世紀アメリカを代表する有名な「弦楽のためのアダージョ」の歌詞のついたバージョンである。
器楽には器楽の良さがあり、声楽には声楽の良さがあるが、時として声楽は器楽を凌駕する瞬間があると感じる事がままある。今回もそうだと確信。

器楽で独特の清潔なモダンとも言うべき世界を持ったマルタンの作風に慣れていた自分にはその作品がクリアで切なく美しいのにはまた違った意味で驚かされた。宗教曲は大抵晩年に書く作曲家が多いが、これはマルタン32歳の作品。静かな揺らぎの中で曲は始まり、いく層にも音が重なる様は水彩画のようなたたずまいを見せ、かと思うと瞬時に沸騰するような色彩の混ざり具合を示した。濁りのないマルタンの和声感が立体的に表現されていた。

2003年に書かれた今回の中で最も新しい作品、スウェーデン人作曲家のサンドストレームの「主を讃えよ」はリズムに特徴のある近代的な作品。彼はまだ60歳代の作曲家である。


何と言っても本日の圧巻はプーランクの「二重合唱のためのカンタータ(人間の顔)」であろう。
この作品だけは宗教曲ではない。

プーランクの音楽も秀逸だがテキストそれ自体が猛烈な迫力で迫ってくる。詩はボール・エリュアールによる。第一次大戦よりシュルレアリスムの運動に参加、第二次大戦中はレジスタンスの地下出版に身を投じ、後に共産党に入党、というその力強さと人の心を捉えて話さない彼の作風にプーランクの宙を舞うような明るく、自由な音楽が余計に生きていく事の困難さ、切なさを色濃くしている。

戦争の悲惨と苦しみを経験した者が知る、暗く激しくそれでも望みを繋いで生きていく様子が痛々しく、しかしながらそのエネルギーは力強い。特に8曲目の「自由」は大戦中レジスタンスに加わったパブロ・ピカソに捧げられている。
「自由」は「私はお前の名(自由)を書く」という意味のJ'ecris ton nom=ジェクリ トノ〜ムというフレーズが20回出てくる。そして21回目にはそれがLiberté=自由(リベルテ)となって終わる。そのジェクリ トノ〜ムがずうっと耳に残る。天から降ってくるような羽が生えて漂っているかのような透明なコーラス。でもその雲の下では人間が殺し合い自由を奪い合う。それを止めるすべもなく…人間は何と愚かな生き物…。そのように考えさせられてしまう作品であった。
ちなみにこの作品は1943年作曲当時にはフランスでは演奏不可能であったほどの難易度。である。

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プーランクはやはり天才だと思う。学習の積み重ねとか優秀とかいう言葉がバカらしくなるほど、この作曲家は天性のメロディが、音楽が溢れ続けて止まらない。それもたった1フレーズ出てきただけで聴衆の心をわしづかみにしてしまう。本来作曲家はこういう人間がなるべきで、神からのGift=才能という言葉が最もふさわしい作曲家だと思っている。

アンコールは三曲
1.ヒューゴ・アルヴェーン(Hugo Alalfvén)の「そして乙女は輪になって踊る」
2.ヴィルヘルム・ステンハンマル(Carl Wilhelm Eugen Stenhammar)
の「後宮の庭園にて」
3.再びヒューゴ・アルヴェーンで「私たちの牧場で」
と、1870年代生まれの代表的なスウェーデンの作曲家二人の親しみやすい曲で終演となった。

ペーター・ダイクストラのおおらかで繊細な感性でまとめられた音楽は非常にバランス感が良かった。

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声楽(声)は器楽よりもずっとシンプルにステージから聴衆の所にやって来て心を掴む楽器。そして最高の声と感性をもった彼らからの波動に静かに身を委ねている瞬間、そのひとときは至福の時であった。
6月18日)

スウェーデン放送合唱団来日公演

♪おまけ♪
書斎の書庫からスウェーデンの出版社の古びた合唱曲集が出てきて
そこにヒューゴ・アルヴェーンのものを数曲発見。
スウェーデン資本の会社に勤めていた父からのプレゼント。
日本で言うところの「日本歌曲全集」みたいなものか。
sverives melodibok.jpg
Edition Wilhelm Hansen Stockholmのもの

posted by カオリン at 15:07| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | コンサートレビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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