ベーゼンドルファーのアップライトに魅せられてから色々と試弾生活を続け、ターゲットはベヒシュタインに絞り込んできていよいよ…というところでなかなか気に入った楽器が見つからない事態に…
フジコ・ヘミングさんがお持ちで有名なC8を弾いてもピンと来ないまま、どうしようか…と考えていると…そのC8の隣に黒いけれどしゃれた金色使いのピアノがあった。「これが今回1台だけ入ってきたアルスノーヴァです」とのこと。
良い楽器らしい。ベヒシュタインがミレニアムの夜明けと共に…とデザインを立ち上げた”Pro Bechshtein”のシリーズの3種の内の最高位機種にあたる。当初、自分の狭い部屋に入れる楽器に黒い色は余りにも重苦しく、絶対にウォルナットかチェリー色にしようと考えていので黒いピアノは眼中になかった。でも「今現在で日本には一台しかないでしょう」…という言葉に誘われ、するりとピアノの前に座って弾いてみた。まぁ、今日の試弾はこれで終わり…別に日本に一台しかないから私にすごくフィットするピアノ、というワケでもないでしょうし、あとは頭を冷やして考え直さなければ…などと考えながらつらつらと弾き始めた瞬間!!!
あぁ、この楽器だ!と手が、指が感じてしまった…思わず「困りましたねぇ…これ…良いピアノです…」お店の方も調律師の方も笑った…「参ったなぁ…一番考えていなかった黒い楽器が当たりの楽器だったとはねぇ…」でも指は止まらない。バッハ、モーツァルト、ベートーベン、ショパン、どんどん弾いてみる。
やはり予想通り、指との相性が抜群。弾いている内にどんどん馴染んでくる。それと中音から下が他のベヒシュタインよりも深みがあり厚みのある音に感じる。ドビュッシーやリストが愛したピアノ、という事だからもちろんその作曲家の曲も弾いてみた。まさにそうでしょうねぇ…という音色。で、ジャズスタイルも素直に反応してきてクセがない。
そう、黒鍵が紫檀であろう…。ステージで弾いてる時と同じような感覚に陥るのはこの黒鍵かもしれない。指に馴染む、吸い付く。
弾いた途端に私の気持ちは決まっていたかな。でも更に弾いてみて、納得している自分を認めたかった。価格は大幅に予算をオーバー。でも出会いとは不思議なもので、「買えない」とは思わなかった。「買うべきでしょうねぇ、これ」と思ってしまったのである。
ユーロピアノの方にこのピアノを押さえていただくことを伝え、今後は紹介してくださった、江戸川橋のピアノ・パッサージュとの商談に入る事となった。
画像がそのベヒシュタイン社の「プロ・ベヒシュタイン」ラインの中のアルスノーヴァ。ラテン語で「新しい芸術」♪コンテンポラリーの作曲家が持つ楽器としても何やら、因縁を感じてしまう。アルスノーヴァには金仕様と銀仕様がある。これはカタログ画像でシルバー仕様。今回日本に入ってきたのはゴールド仕様の方。実は我が家は家具の金属はすべて金色で統一している…全く…出逢うべくして出逢った楽器…としか思えない。
やっとやっと…やっと愛すべき楽器が見つかった…といったところ。全神経を集中した数週間…疲れた、というのが本当かな。でもそれはそれはエキサイティングな日々でもあったわけで…幸せ…


