藤井多恵子ひな祭りコンサート昨年の敬老の日に初めてコンサートをした渋谷区高齢者ケアセンター。
半年も経たない内にまた皆さんとお目にかかれた。
今回は立ち見で後ろまでお客さまが一杯!
敬老の日のコンサートの時よりも慣れたのか、
この日会場の皆さんは良く歌っていた。
今回のコンサートの準備に稽古合わせに伺っていた際、
藤井さんは「ひなまつりだから和服で歌おうかとも思うの」
といって見せて下さったのは年齢相応の渋い付下げ。
そこで、私ははっきり申し上げた
「このお着物ではフツー過ぎます。何かお振り袖はありませんか?」
「あるわよ?すっごい娘娘したのとか…。たくさん…」
「それで行きましょうよ、やはりケアを受けている高齢者の方々に
歌手の方は夢を見せてあげるのが任務だと思いますし…。ね?」
「でもおかしい人に思われないかしらぁ…(不安げ)」
「いえ、お振り袖にしましょうよ、うんと派手なのに。」
「考えてみるわ…」
というやり取りで上の画像の白い艶やかな振り袖の登場となった。
それは良かったのだけれど、二日前の稽古合わせになっていきなり、
藤井さんが「二人で着物で登場するのよ」と言うのである!
「へ??」私は黒いパンツスーツでマニッシュに決めるつもりだった。
最近子宮筋腫の食事療法の副作用で非常にスリムになったので
パンツスタイルにも結構自信もでてきたし…とか密かに思っていたし(爆)
でも伴奏者も和服じゃなくちゃ出演しない…とかなんとか
ソリストがごねたので(笑)仕方なく私まで和服…とほほ…
なんという計算違い…。
でもおいで下さった方はとても喜んで下さったそうなので
それはそれで良かったかなぁ…とも。
しかし藤井さんはあんな派手な振り袖も素晴らしくお似合いで
さらに十八番の「踊り明かしたい」では客席に下りて練り歩き、
島倉千代子さながらに皆さんに握手して回った。
その時のセンターの入所者のおじいちゃま、おばあちゃまの
嬉しそうな気恥ずかしそうな表情が忘れられない。
自分の前に歌手がやってくる…手を出そうかな、どうしようかな、
と思いながら上気してくる様子はステージからでも如実に伝わる…。
あの瞬間客席の皆さんは普段出た事のないドーパミンがたくさん出たのじゃないかしら。
心がウキウキ、ドキドキするというのは抽象的な言葉だし表現だけれど
みんな、どういう事なのか知っている。
私達はそういう抽象的な、目に見えない波動を作り出して
それを送り出し、伝える…という仕事をしている。
この日、それがアンコールでソリストがいなく空になっている
ステージで客席の藤井さんを目で追いながらピアノ伴奏していると、
それが形になって本当によく見えた。
もちろん二期会週間などでサントリーホールで伴奏する時も
それはそれは日本の中心でハイソサエティなお客様に囲まれ
ステージに上がる醍醐味も素晴らしいと感じるけれど、
この高齢者ケアセンターでのコンサートには
このコンサートにしかない心の震えとか共振があり、それが
感ぜられる事が何よりも至福の時であるのも事実なのである。
幸せと共感を求めて、藤井多恵子の音楽行脚は今日もまた続く…。
そんな有意義な豊かな時間だった。
いつも細やかに心配り下さる渋谷区高齢者ケアセンターの
館長さま始め、スタッフの皆さまに感謝申し上げて…。
そして一般からおいで下さった方々にも感謝を込めて。
"ありがとうございました。また次回お目にかかれる日を楽しみに"
楽屋での画像