昨年の秋の終わりにレコーディングした作品「Junk Moodジャンク・ムード」の収録されたCDがもうじき発売になろうとしている。
今回の作品「ジャンク・ムード」の編成はトランペット、ピアノ、マリンバ、打楽器。
一つの仕事が終わるとその瞬間から次の切り替えに入ることが多く、私は大抵一気に色々と忘れてしまう事が多い。それにしてもあのスリリングでエキサイティングな神代修(くましろおさむ)氏とのやりとりは鮮やかに思い出されてしまう。
ブログを読んでいらした皆様には、私がトランペットの神代氏から委嘱を受けたその作品の締め切り日時が互いにずれていた…というのがあって私は心臓が飛び出るほど、呼吸困難に陥るほどのショックを受けてのあえぎあえぎの完成だった事を思い出していただきたい。
彼の予定の締め切りと私の予定の締め切りでは1週間以上の開きがあったから…それでも曲が仕上がり、今度は演奏家のことで大変…になってピアニストが中村和枝さんになって、また一安心。ピアノパートは本当に今回、いやらしいミスを誘発するような作りになってしまっている(わざとじゃあないんだってばぁ…本当に)別に難しい音ではないけれど、人間的に呼吸できない曲なのね、そういうのは意外に難しいわけで。
録音は真鶴で行われた。檜ホールというところでの収録。
このホール、本当に総檜。入ると檜の香りで一杯で深呼吸し続けたくなる素晴らしいホール。 で、緑のマリンバはここに似合いすぎだが、これはパーカッショニスト寺田由美さんご持参のご自慢の楽器。私も大好きなKorogiこおろぎ社の名器。
さて、この録音当日にもまた色々な事が起こった…。
まず、そのホールのすぐ横で工事が行われており、そのノイズがホールに入ってしまうために工事の止まったときしか録音ができない事態に…
最初はみんなでアタマを抱えたのだけれど、逆にこれが良くて、この間に各自練習ができたり、リハーサルがきっちりとできるという好条件にも結びついてしまった。
さらに檜ホールにはスタインウェイとベーゼンドルファーがあり、聞き比べてみるとベーゼンドルファーの方が圧倒的に響きのバランスが良く、綺麗に鳴っていた。あとはピアニストの自由であるから、こちらが何とも言えず祈るように待っていると…中村和枝さんが「私もベーゼンの方がいい気がするのでこちらで録音します」と言って下さった!!彼女はご自宅もスタインウェイで練習なさってるからベーゼンとは言って下さらないかな、と思っていたので余計に嬉しかった。
ベーゼンドルファー使用のレコーディングも相当少ないと思う。
目の前には様々な解決せねばならない現実がいっぱいあったのだけれど、その中でアーティストが何にも捕らわれずにみんな心が一つになった、というのが実感できる素晴らしい録音で、私はこの真鶴滞在を一生忘れられないような気がする。
で、神代修さんについて。
くまさん&kaorin
彼は、音楽の事を第一に、どうしたら良い音楽を作れるか、を常に考えて生きている音楽家なのだというのはおつきあいすればするほど感じさせられる御仁で、そこには何の心の曇りもなく、欲や見栄もなく、形やブランドにも捕らわれていないし、ある意味常識に縛られる事もない素晴らしいアーティスト。
神代さんのトランペットの音色の美しさは際だっており、音色の中に鋼(ハガネ)のような芯の強さとしなやかさとが共存している。さらに彼のハート、インテリジェンス、すべてを備えたその音楽性にはただただ感激あるのみ。それが全て何気ないのよ、そこがまたニクい…
こんな素晴らしい方に拙作が演奏されることのうれしさは言葉にはできない。チラシが仕上がってきたらしいので、それが手元に来たらまたこの新しいCDの宣伝をブログにアップ予定。
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神代修さんのオフィシャルサイトこの中の、生い立ちを是非お読み下さい。
神代修氏の音楽に対するその姿勢がご理解いただけると思います。
皆様お楽しみに。
ラベル:Junk Mood